経営状況分析Y点について

1.はじめに

公共工事の入札参加資格を取得するためには、経営事項審査を受審する必要があります。
その経営事項審査の総合評定値(P点)を少しでも上げたいと考える建設業者様は多くいらっしゃいます。

今回はその総合評定値(P点)を算出する際に使用する、「経営状況分析(Y点)」について解説します。申請の流れや、点数アップのポイントを把握することで、P点アップにつなげましょう。

※確認

総合評定値(P点)算定式
0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W) = 総合評定値(P点)

→ Y点 = 総合評定値P点の20%

2.経営状況分析Y点とは

経営状況分析は、建設業者の財務の健全性を評価するもので、Y点という数値で表わされます。

経営事項審査では、経営状況分析(Y点)、経営規模(X1、X2点)、技術力(Z点)、社会性(W点)を用いて、総合評定値P点を算出します。その際、経営状況分析(Y点)に限っては、事前に民間の登録分析機関に申請を行い、そこで出た数値をそのまま経営事項審査に使用する形となっています。

3.申請先

2025年7月現在、登録経営状況分析機関は以下の10社となっています。

登録番号機関の名称事務所の所在地電話番号
(一財)建設業情報管理センター東京都中央区日本橋大伝馬町14-103-6661-6663
(株)マネージメント・データ・リサーチ熊本県熊本市中央区京町2-2-37096-278-8330
ワイズ公共データシステム(株)長野県長野市田町2120-1026-232-1145
(株)九州経営情報分析センター長崎県長崎市今博多町22095-811-1477
(株)北海道経営情報センター北海道札幌市白石区東札幌一条4-8-1011-820-6111
(株)ネットコア栃木県宇都宮市鶴田2-5-24028-649-0111
(株)経営状況分析センター東京都港区三田1-2-2203-6685-1008
10経営状況分析センター西日本(株)山口県宇部市北琴芝1-6-100836-38-3781
11(株)NKB福岡県北九州市小倉北区重住3-2-12093-982-3800
22(株)建設業経営情報分析センター東京都立川市柴崎町2-17-6042-505-7533

※国土交通省 登録経営状況分析機関一覧 引用

申請先は自身で選択が可能ですが、申請方法、提出書類、審査期間の違いがあるため、事前確認が必要です。

4.経営状況分析Y点の8つの指標

Y点は以下の8つの指標から構成されており、それぞれの点数をもとに最終的にY点を算出します。

X1:純支払利息比率
X2:負債回転期間
X3:総資本売上総利益率
X4:売上高経常利益率
X5:自己資本対固定資産比率
X6:自己資本比率
X7:営業キャッシュフロー
X8:利益剰余金

それぞれの概要、算定式、点数のポイントを解説していきます。

X1:純支払利息比率

概要:売上高に対して、借入金などの利息をどれだけ支払ったかを表す指標です。

算定式:(支払利息-受取利息配当金)÷ 売上高×100

ポイント:算定式の数値が、低いほど評価が高くなります。
利息の支払いが多いと数値が高くなってしまうため、なるべく借入を少なくすることや、金利の低い借入先を選ぶことが点数アップにつながります。

X2:負債回転期間

概要:負債の総額が、月商の何カ月分に相当するのかを表す指標です。

算定式:負債合計 ÷ (売上高÷12)
※負債合計 = 流動負債 + 固定負債

ポイント:算出された数値が小さいほど(期間が短い)評価が高くなります。
およそ5~6カ月程度が平均とされており、期間が増えるほど評価は下がります。

X3:総資本売上総利益率

概要:企業が保有する総資本を使って、どれだけ売上総利益(粗利益)を生み出しているかを示す指標です。

算定式:売上総利益 ÷ 総資本(2期平均) × 100

ポイント:数値が大きいほど評価が高くなります。
昨今の物価高の影響で原価が上がっていることもあり、簡単には上げにくい部分ですが、少しでも原価をおさえ利益率を上げることが評価のアップにつながります。

X4:売上高経常利益率

概要:売上高に対する経常利益の割合を示す指標で、企業の収益力を表します。

算定式:経常利益 ÷ 売上高 × 100

ポイント:数値が大きいほど評価が高くなります。
X3:総資本売上総利益率同様、利益率を上げることが重要になってきます。
少しでも原価をおさえ利益率を上げることが評価のアップにつながります。

X5:自己資本対固定資産比率

概要:保有する不動産や機械・器具等の固定資産を、どれだけ自己資本で賄っているかを表す指標です。

算定式:自己資本 ÷ 固定資産 × 100

ポイント:数値が大きいほど評価が高くなります。
自己資本を多くすることが点数アップにつながります。
不要な資産の売却を行うことや、大きな設備投資を減らすことも点数アップにつながります。

X6:自己資本比率

概要:企業の総資本(総資産)に対して自己資本がどれだけあるかを示す指標で、会社の財務の健全性・安定性を測る代表的な数値です。

算定式:自己資本 ÷ 総資本 × 100

ポイント:数値が大きいほど評価が高くなります。
借入の額をできるだけ減らし、自己資本の割合を増やすことが点数アップにつながります。

X7:営業キャッシュフロー

概要:企業が本業だけでどれだけ現金を生み出しているかを示す指標です。

算定式:営業キャッシュフロー(2期平均) ÷ 1億

ポイント:営業キャッシュフローは「企業が本業で安定して資金を生み出せるかどうか」の判断材料になります。黒字であっても営業キャッシュフローが赤字なら、資金繰りが悪化するリスクがあると評価され、Y点も下がります。
本業での安定的な売上を継続すること、売掛金の回収速度を速めることなどが、点数アップにつながります。

X8:利益剰余金

概要:企業がこれまでの事業活動で得た利益の蓄積であり、株主への配当などは差し引き、内部留保に回される資本の一部です。

算定式:利益剰余金 ÷ 1億

ポイント:配当の額をおさえ、継続的に利益を出し続け、内部留保を増やしていくことが重要です。

5.8つの指標の重要度

ここまで解説してきたX1~X8は、どれも重要な指標ではありますが、Y点算定にあたっては優先順位があります。これを「Y点への寄与度」といいます。
寄与度が大きいほど、Y点に与える影響も大きく、優先して点数アップを目指すべき指標といえます。

指標寄与度
X1:純支払利息比率29.9%
X2:負債回転期間11.4%
X3:総資本売上総利益率21.4%
X4:売上高経常利益率5.7%
X5:自己資本対固定資産比率6.8%
X6:自己資本比率14.6%
X7:営業キャッシュフロー5.7%
X8:利益剰余金4.4%

まず重要なのが、X1:純支払利息比率と、X3:総資本売上総利益率です。
この2つの指標だけでY点に占める割合は5割を超えます。そのため大きく影響する借入の額や、利益率の向上は、最優先に取り組むべき項目といえます。

つぎにX7:営業キャッシュフローと、X8:利益剰余金です。
この2つの指標は金額そのものが点数に直結するため、規模の大きな会社が有利になります。そのためここの点数をあげようとしても、急激な上昇は現実的ではありません。
また寄与度も2つ合わせて10%程度のため、点数アップを狙う指標としては後回しで良いと思います。

はじめて経営事項審査を受ける際には、少しでも点数をあげるために、あれもこれもと対策を練る必要があります。しかし全て満点を取ることは不可能なので、優先順位をたてて点数アップに取り組み、事業活動を継続していく中で長期的、段階的に点数をあげていくことが、経営状況分析Y点をあげる最善の策だと思います。

6.まとめ

8つの指標からも分かるように、経営状況分析Y点は企業の経営状況がはっきりと数値化されます。そのため思うように点数が伸びない方もいます。
しかし入札参加資格を取得するために限らず、分析を行うことで今後の事業活動の方向性の確認にも使える指標のため、分析結果を活用した経営を行っていくことが重要です。

7.申請にあたって

弊社は経営状況分析申請、経営事項審査、入札参加資格代行申請を行っております。
・何から準備したらいいのか分からない
・経営事項審査で何点くらいになるのか知りたい
・いつごろから入札に感化できるのか など
経営事項審査、入札参加に関するご相談はお気軽にお問い合わせフォームまたはお電話にて、ご連絡ください。

keyboard_arrow_up

09031801151 問い合わせバナー 無料相談について