経営事項審査・社会性W点について

1.はじめに

このページでは経営事項審査の審査項目の、社会性W点について解説します。
総合評定値P点のうち、社会性W点が占める割合は15%です。
ほかの項目と比べるとP点に占める割合は低いですが、企業として押さえておきたいポイントも多いため、確実に点数を積み重ねていきたい項目です。

2.経営事項審査の確認

経営事項審査の審査項目は大きく4つに分けられており、それぞれの点数に決められた割合をかけ、合計した数値が総合評定値(P点)となります。

以下の項目ごとに点数がつけられ、総合評定値(P点)を算出します。

項目内容
経営状況分析(Y点)財務の健全性(負債、収益性、財務状況等)
経営規模(X1、X2点)完成工事高、自己資本額、利払前税引前償却前利益の額など
技術力(Z点)技術者数、元請金額など
社会性(W点)労働福祉状況、建設機械保有数(社会保険加入など)
総合評定値(P点)上記すべてを加味した総合点

※総合評定値(P点)算定式
0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W) = 総合評定値(P点)

このP点をもとに、入札参加資格の格付けが行われます。

3.社会性の審査について

社会性の審査は、社会性以外の項目に当てはまらない部分の審査が行われます。

審査項目は細分化されており、以下のW1~W8の8つの項目それぞれで点数をつけ、その合計点をもとに、W点を算出する形となっています。

W1:建設工事の担い手の育成及び確保に関する取り組み状況の点数
W2:建設業の営業継続の状況の点数
W3:防災活動への貢献状況の点数
W4:法令順守状況の点数
W5:建設業経理状況の点数
W6:研究開発状況の点数
W7:建設機械保有状況の点数
W8:国又は国際標準化機構が定めた規格による認証または登録の状況の点数

W点の算定式はこちらです。
(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8)×10×190÷200 = W点

W1~W8について解説します。

4.W1:建設工事の担い手の育成及び確保に関する取り組み状況の点数

W1は、社会保険の加入状況や、退職金制度の加入状況、建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録状況などが審査されます。

審査項目最高点
①雇用保険の加入状況0点
②健康保険の加入状況0点
③厚生年金保険の加入状況0点
④建退共の加入状況15点
⑤退職時一時金制度若しくは企業年金制度の導入15点
⑥法定外労働災害補償制度の加入状況15点
⑦若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況2点
⑧知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況10点
⑨ワークライフバランスに関する取組の状況5点
⑩建設工事に従事する者の就業規則を蓄積するために必要な措置の実施状況15点

W1だけで10項目もあり大変に思うかもしれませんが、1つ1つクリアしていく必要があります。

4-1.①~③:雇用保険、健康保険、厚生年金保険の加入状況

①~③の項目は、加入していないと減点になります。

項目減点数
雇用保険未加入-40点
健康保険未加入-40点
厚生年金保険未加入-40点

他の項目の点数からしても、かなり大きな減点となってしまうため、確実に加入しておく必要があります。

4-2.④建退共の加入状況

「建設業退職金共済制度」への加入状況が審査され、加入していると15点が加算されます。

4-3.⑤退職時一時金制度若しくは企業年金制度の導入

退職時一時金制度若しくは企業年金制度を導入している場合、15点が加算されます。
両方導入している場合でも、どちらか1つの加入証明書等の証明資料の提出が必要になります。

4-4.⑥法定外労働災害補償制度の加入状況

法定外労働災害補償制度は、現場での労働災害発生時に対して、国が行う法定の労働災害補償保険に上乗せして保証を手厚くする制度です。
加入している場合、15点が加算されます。

4-5.⑦若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況

若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況は次の要件で審査が行われ、合計2点加算されます。

・35歳未満の技術職員の数が、技術職員全体の15%以上である場合(1点
・審査基準日から遡って1年以内に新たに技術職員となった35歳未満の技術職員の数が、審査基準日における技術職員の数の1%以上の場合(1点

若い技術職員を多く雇用することで加点対象となるため、Z点(技術力)アップを目指す際も、若い方の採用にも力を入れたほうが加点を望めます。

4-6.⑧知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況

知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況は、企業が雇用する技術者および技能者の知識及び技術又は技能の向上に努めている場合に、Z点(技術力)とは別で加点されます。
対象の技術者、技能者数に応じて、最大10点が加算されます。

4-7.⑨ワークライフバランスに関する取組の状況

ワークライフバランスに関する取組の状況は、「女性活躍推進法に基づく認定」「次世代法に基づく認定」「若年雇用促進法に基づく認定」の3つの認定をもとに、審査基準日(決算日)において取得している場合に加算されます。

3つそれぞれ加点されるわけではなく、以下の表で最大の点の項目が加点されます。

認定区分点数
女性活躍推進法に基づく認定プラチナえるぼし5点
えるぼし(第3段階)4点
えるぼし(第2段階)3点
えるぼし(第1段階)2点
次世代法に基づく認定プラチナくるみん5点
くるみん3点
トライくるみん3点
若年雇用促進法に基づく認定ユースエール4点

4-8.⑩建設工事に従事する者の就業規則を蓄積するために必要な措置の実施状況

建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録状況を行い、就業履歴の蓄積のために必要な環境を整備(カードリーダーの設置等)した場合に加点されます。

加点要件
1.民間工事を含むすべての建設工事で、上記の措置を実施した場合(15点
2.すべての公共工事で、上記の措置を実施した場合(10点

5.W2:建設業の営業継続の状況の点数

W2は、審査基準日までの営業年数に応じて以下の表の点数がつけられます。しかし、民事再生法・会社再生法の適用を受けている場合は、減点(-60点)されます。

千葉県 経営事項審査関係 総合評定値の計算方法 引用

6.W3:防災活動への貢献状況の点数

W3は、国や地方公共団体と防災協定を締結している場合に、加点されます。
防災協定は、災害時の建設業者の防災活動等について定めた協定を指し、締結している場合は20点が加点されます。

項目点数
防災協定を締結している場合20点
その他0点

7.W4:法令順守状況の点数

W4は、審査対象年度に営業停止処分を受けた場合は-30点、指示処分を受けた場合は-15点減点されます。

項目点数
営業停止処分-30点
指示処分-15点
処分無し0点

8.W5:建設業経理状況の点数

W5は、監査の受審状況と、社内に公認会計士等が常勤している場合に加点されます。

8-1.監査の受審状況の点数

監査の受審状況の点数は、会計監査人、会計参与を設置した場合に、以下の点数が加点されます。

監査の受審状況点数
会計監査人を設置20点
会計参与を設置10点
経理処理の適正を確認した旨の書類を提出2点
監査無し0点

8-2.公認会計士等の点数

公認会計士等の点数は、社内の公認会計士等の数をもとに数値を算出し、その数値と年間平均完成工事高を、表にあてはめた点数が加点されます。

公認会計士等(1人あたり1点)
1.公認会計士であって、公認会計士法第28条の規定による研修を受講した者
2.税理士であって、所属税理士会が規定する研修を受講した者
3.1級登録経理試験に合格した年度の翌年度の開始日から5年経過していない者
4,1級登録経理講習を受講した年度の翌年度の開始日から5年経過していない者
2級登録経理試験合格者数等(1人当たり0.4点)
1.2級登録経理紙面に合格した年度の翌年度の開始日から5年経過していない者
2.2級登録経理講習を受講した年度の翌年度の開始日から5年経過していない者

上記の人数から、表に当てはめる数値を算出します。
算定式:(公認会計士等の数)×1+(2級登録経理試験合格者の数)×0.4

この数値と、年間平均完成工事高を以下の表にあてはめます。

千葉県 経営事項審査関係 総合評定値の計算方法 引用

9.W6:研究開発状況の点数

W6は研究開発にあてた費用を、以下の表に当てはめた点数が加点されます。
ただし、会計監査人設置会社に限られます。

千葉県 経営事項審査関係 総合評定値の計算方法 引用

10.W7:建設機械保有状況の点数

W7は会社が保有またはリース契約を締結している建設機械の台数をもとに、加点されます。

加点対象の建設機械は、以下のものが対象です。

対象建設機械要件
1.ショベル系掘削機ショベル、バックホウ、ドラグライン、クラムシェル、クレーン又はパイルドライバーのアタッチメントを有するもの
2.ブルドーザー自重3トン以上のもの
3.トラクターショベルバケット容量が0.4立方平方メートル以上のもの
4.モーターグレーダー自重5トン以上のもの
5.ダンプ「ダンプ」「ダンプフルトレーラ」「ダンプセミトレーラ」など
6.移動式クレーンつり上げ荷重3トン以上のもの
7.締固め用機械タイヤローラー、振動ローラー等
8.解体用機械ブレーカ等
9.高所作業車作業床高さ2m以上のもの

上記の建設機械の台数をもとに、以下の表の点数が加点されます。

台数点数台数点数
0台0点8台12点
1台5点9台12点
2台6点10台13点
3台7点11台13点
4台8点12台14点
5台9点13台14点
6台10点14台15点
7台11点15台以上15点

11.W8:国又は国際標準化機構が定めた規格による認証または登録の状況の点数

W8はISO9001、ISO14001,エコアクション21の登録状況に応じて、以下の点数が加点されます。

千葉県 経営事項審査関係 総合評定値の計算方法 引用

12.W点の算定

ここまでW1~W8の加点方法を解説してきましたが、それぞれの点数をそのままW点として使用するのではなく、以下の算定式にあてはめてW点を算出します。

W点の算定式はこちらです。
(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8)×10×190÷200 = W点

13.社会性W点アップのポイント

W1~W8はそれぞれ点数アップには重要な点ですが、優先順位をつけて対策していく必要があります。

1.W1、W4は最低限クリアしていく

W1:建設工事の担い手の育成及び確保に関する取り組み状況の点数
W4:法令順守状況の点数

これらは経営を継続していくためにも、最低限点数を確保したい項目です。
特にW4は減点項目のため、他の項目の加点を台無しにしないように、遵守する必要があります。

2.W7は要検討

W7:建設機械保有状況の点数

建設機械の保有台数は、数によって点数が上がるため検討の価値があります。
しかし急に増加させることによって資金繰りに影響が出たり、使用しない状態が続くのは経営事項審査全体を通して悪影響が出るため、注意が必要です。

14.まとめ

ここまで解説してきたように、社会性W点は減点項目や要件を満たしていることが前提の項目があります。項目数は多いですが1つずつクリアしていき、経営事項審査の評定アップに繋げましょう。

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